社労士と中小企業診断士はどっちが難しい?ダブルライセンスの強みも解説
社会保険労務士(社労士)と中小企業診断士は、いずれも社会人のキャリアアップに役立つと人気の国家資格です。
難易度も近いと言われることから、どちらを受けるべきか、ダブルで受験するべきかといった悩みを持つ方も多いでしょう。
そこでこの記事では社労士と中小企業診断士を様々な観点から比較します。記事の後半ではダブルライセンスについても話します。
・中小企業診断士と社労士の難易度の違い
・中小企業診断士と社労士の仕事の違い
・ダブルライセンスのメリット
・ダブルで合格する勉強法・スケジュール
中小企業診断士や社労士に興味がある方は、ぜひ最後まで記事を読んでください。
中小企業診断士試験に効率よく合格する勉強法を知りたい方は、本記事を読んだ後に以下の記事も読んでいただけると理解が深まるかと思います。
社労士と中小企業診断士|試験の比較
社労士と中小企業診断士の試験の難易度を、以下の観点で比較します。
- 受験資格
- 試験科目
- 合格基準
- 合格率
- 偏差値
- 勉強時間
受験資格
社労士 | 中小企業診断士 |
---|---|
条件あり | 制限なし |
社労士は「①学歴」「②実務経験」「③厚生労働大臣の認めた国家試験合格」のいずれか1つを満たさないと受験できません。
詳細は社会保険労務試験オフィシャルサイト「受験資格について」を参照してください。
中小企業診断士は年齢・学歴・職歴・国籍などの制限なく、誰でも受験できます。
試験科目
社労士 | 中小企業診断士 |
---|---|
8科目 | 7科目(一次) 4科目(二次) |
社労士は以下の8科目で行われます。
- 労働基準法・労働安全衛生法
- 労災保険法
- 雇用保険法
- 労働一般常識
- 健康保険法
- 厚生年金保険法
- 国民年金法
- 社会保険一般常識
中小企業診断士はまず以下7科目の一次試験が行われます。
- 経済学・経済政策
- 財務・会計
- 企業経営理論
- 運営管理
- 経営法務
- 経営情報システム
- 中小企業経営・中小企業政策
その後、以下4科目の二次試験が行われます。
- 事例Ⅰ(人事・組織)
- 事例Ⅱ(マーケティング)
- 事例Ⅲ(生産・技術)
- 事例Ⅳ(財務・会計)
二次試験まで考慮すると、中小企業診断士の方が科目数が多いです。
合格基準
社労士 | 中小企業診断士 |
---|---|
【選択式】 40点中28点以上&各科目3点以上 | 【一次試験】 700点中420点以上&40点未満の科目無し |
【択一式】 70点中49点以上&各科目4点以上 | 【二次試験】 400点中240点以上&40点未満の科目無し |
社労士は7割以上、中小企業診断士は6割以上取れば合格です。それぞれ足切りラインが設けられている点に注意しましょう。
中小企業診断士は出題範囲が広いですが合格基準は低い。つまり「広く浅く学ぶ」能力が求められている試験です。
なお中小企業診断士二次試験は上記のように合格基準が設けられていますが、合格率は毎年18%程度に調整されており、実質的には相対評価の試験です。
合格率
社労士 | 中小企業診断士 |
---|---|
5%~8% | 【一次試験】約30% 【二次試験】約18% |
中小企業診断士の一次試験、二次試験にストレートで合格できる確率を5.4%(30%×18%)と考えると、社労士と中小企業診断士の合格率は同水準です。
偏差値
社労士 | 中小企業診断士 |
---|---|
65 | 67 |
資格の紹介サイト「資格の取り方」によると、偏差値はやや中小企業診断士の方が高いです。
ただしどちらが難しいかは微妙です。社労士は暗記メイン、中小企業診断士は「考える問題」がメインと難しさの性質が異なるからです。暗記が苦手な人は中小企業診断士の方が楽に感じるでしょう。
勉強時間
社労士 | 中小企業診断士 |
---|---|
500時間~1,000時間 | 1,000時間程度 |
一般的にはこれくらいかかる、と言われる勉強時間です。ただし資格試験の勉強時間は、予備知識の量や勉強の効率により大きく変化します。
社労士と中小企業診断士|仕事の比較
ここからは社労士と中小企業診断士の仕事について、以下の観点で比較します。
- 業務内容
- 平均年収
- 働き方
業務内容
社労士は人事・労務に関する仕事がメインです。特に以下は独占業務と呼ばれ、社会保険労務士にのみ許される仕事です。
- 1号業務(労働・社会保険関連法に基づく申請書の作成、手続き代行)
- 2号業務(労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類作成)
【参考】社会保険労務士法(e-GOV)
中小企業診断士には独占業務がなく、仕事は多岐に渡ります。仕事の全体像は下図です。
顧客の課題解決や、そこで得た知見を講師業や執筆業で共有することが主な仕事です。詳細は中小企業診断士は何ができる?仕事内容10選で解説しています。
年収
大手予備校のTACによると、社労士の年収は500万円~700万円程度とのことです。ただし勤務形態や年代によりばらつきが大きいです。
【参考】社労士の平均年収はいくら?実際に稼げるのはこんな社労士だ!(資格の学校TAC)
中小企業診断士の年収は、独立している場合で500万円~800万円がボリュームゾーンです。
働き方
どちらの資格も、主な働き方は会社員と独立の2つ。その中間として事務所(社会保険労務士事務所、中小企業診断士事務所)で働く道もあります。
会社員の場合は、資格の専門性を活かせる部署に異動できる場合があります。(社労士なら人事部門、中小企業診断士なら経営企画部門など)
なお「中小企業診断士を取ればコンサルティング会社に転職しやすい」とう言説もありますが、私(BIG4コンサル出身)の経験上、それはウソです。
社労士と中小企業診断士|ダブルライセンスのメリット
社労士と中小企業診断士は相性が良く、ダブルライセンスのメリットが大きい資格と言われます。
一般社団法人中小企業診断協会が発表している『中小企業診断士活動状況アンケート調査』によると、回答した中小企業診断士の7.7%(135名/1,748名)が社労士を持っています。
ダブルライセンスのメリットは以下です。
メリット①相乗効果が高い
社労士と中小企業診断士のダブルライセンスは相乗効果が高いです。
なぜなら企業の四大経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)のうち、社労士は「ヒト」に、中小企業診断士は主に「モノ」「カネ」「情報」に強みがある資格だからです。
両方の資格を持つことで企業の経営全般をサポートできます。
メリット②リスクヘッジになる
ダブルライセンスを取り仕事の幅を広げれば、片方の資格で思うように仕事が取れない場合のリスクヘッジになります。
社労士と中小企業診断士のダブル受験は可能か
同じ年に社労士と中小企業診断士にダブル受験するのはおすすめしません。なぜなら社労士試験と中小企業診断士一次試験はどちらも8月に行われ、勉強のピークが重なるからです。
どちらを先に受けるか決められない人は、社労士から受けましょう。なぜなら社労士は試験一発で合否が決まる一方、中小企業診断士は二次試験まであり受験が長期化しやすいからです。
社労士と中小企業診断士は同じ予備校や通信講座で勉強しましょう。カリキュラムや教材の作りが似ており、後から取り組む資格が勉強しやすいからです。
予備校や通信講座では、複数の資格講座を受講すると割引が受けられる場合が多い点もメリットです。
社労士と中小企業診断士に関するまとめ
今回は社労士と中小企業診断士の違いやダブルライセンスについて解説しました。最後に要点を整理します。
- 難易度の比較は難しいが、社労士は暗記メイン、中小企業診断士は「考える問題」メインと難しさの性質が違う
- 社労士と中小企業診断士の仕事は相乗効果が高く、ダブルライセンスのメリットは大きい
- 同じ年の同時取得は非現実的。ポリシーが無いなら社労士から挑戦しよう
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