中小企業診断士とは– category –

「中小企業診断士はどのような資格ですか?」という疑問に広く答える記事です。この記事を読めば、中小企業診断士のことが一通り理解できるようになります。

中小企業診断士とは?

中小企業診断士は、企業の経営に対して助言・診断を行う「経営コンサルタント」の唯一の国家資格です。

中小企業支援法という法律に基づき、経済産業大臣が登録しています。日本の全企業の99.7%を占める中小企業の支援や、中小企業と行政・金融機関をつなぐパイプ役としての活動が求められています。

経営の知識を幅広く習得できる資格として、ビジネスパーソンの間で人気が高まっています。2016年の日本経済新聞の調査では、ビジネスパーソンが新たに取得したい資格の首位になりました。

【参考】中小企業診断士トップに 取得したいビジネス関連資格(日本経済新聞)

中小企業診断士の仕事内容

中小企業診断士の仕事の全体像。主にコンサルティング業、講師業、執筆業の3つがある。
中小企業診断士の仕事(全体像)

中小企業診断士の主な仕事は、コンサルティング業、講師業、執筆業の3つです。さらに分解すると以下のような仕事があります。

  • 経営コンサルティング
  • 経営顧問
  • 補助金申請支援
  • 専門家派遣
  • 窓口相談員
  • セミナー講師
  • 企業向け研修講師
  • 予備校講師
  • 書籍出版
  • Web媒体での情報発信

メインはコンサルティング業。そこで得た知見を活かして講師業や執筆業を行い、業界内の権威・信頼を高めます。

仕事のくわしい内容や仕事の取り方は、以下の記事で解説しています。

中小企業診断士を取るメリット

中小企業診断士を取るメリットは大きく4つです。

①スキルアップ

中小企業診断士の勉強をすると、ビジネスパーソンとしての能力が向上します。

一次試験では経営に関する幅広い知識が身につきます。以下のようにジャンルの異なる7科目が出題されるからです。

  • 経済学・経済政策
  • 財務・会計
  • 企業経営理論
  • 運営管理
  • 経営法務
  • 経営情報システム
  • 中小企業経営・中小企業政策

二次試験では論理的に物事を考え、アウトプットする力が身につきます。企業の経営状況を説明する文章(与件文)を読み、設問に答える独特の形式で行われるからです。

中小企業診断士二次試験の問題例。企業の経営状況を説明した文章(与件文)を読み、設問に答える形式で行われる。
中小企業診断士二次試験の出題形式

②異動・昇進・収入アップに有利

中小企業診断士を持っていると、経営企画部など経営の根幹に近い部署への異動に有利になる場合があります。

また企業によっては、合格者に報奨金や資格手当を支給することもあります。

特に金融業界はその傾向が強いです。たとえば、静岡県の清水銀行は、中小企業診断士の合格者に30万円の報奨金を支給しています。

金融業界は社員に中小企業診断士の取得を奨励しており、受験を支援する制度が厚いです。

③独立のきっかけになる

中小企業診断士は前述の通り仕事の幅が広く、独立しやすい資格です。

一般社団法人中小企業診断協会が発表している『中小企業診断士活動状況アンケート調査』によると、約46%の中小企業診断士が独立しています

職業構成比(%)
プロコン経営(兼業なし)28.5
プロコン経営(兼業あり)17.5
コンサルティング会社勤務2.3
公務員1.3
公的機関・団体等4.5
調査・研究機関0.6
金融機関6.8
民間企業33.2
コンサルも勤務もしていない1.7
その他3.3
無回答0.2
中小企業診断士の職業

会社に依存せずに自分の力でキャリアを切り拓きたい方、定年後のセカンドキャリアに備えたい方にはおすすめです。

ただし中小企業診断士には独占業務が無く、独立後に確実に仕事をいただける保証はありません。独立の失敗パターンと解決先などを以下の記事で解説しています。あわせてご覧ください。

④転職活動・就職活動への活用

資格を取ると転職活動や就職活動でプラスに評価される場合があります。ただし中小企業診断士は何の専門知識を持つかが相手に伝わりづらく、資格1つで転職・就職が決まることはありません

インターネット上では「中小企業診断士を取ればコンサルティング業界への転職に有利」と主張する記事をよく見ますが、コンサルティング会社出身の私の経験を踏まえると、それはウソです。

中小企業診断士の転職事情については以下の記事でくわしく話しています。

なお大学生が中小企業診断士を取れば大きな希少価値が生まれるので、新卒採用の場で評価されるでしょう。資格を取るだけで就活を無双できるようなことはありませんが…。

中小企業診断士の年収

独立している中小企業診断士の年収を見ると、501万円~800万円の方が多いです。

選択肢回答数構成比(%)
~300万円8314.3
~400万円518.8
~500万円5810.0
~800万円12421.4
~1,000万円6611.4
~1,500万円8915.4
~2,000万円396.7
~2,500万円254.3
~3,000万円162.8
3,001万円~284.8
中小企業診断士の年収
(中小企業診断士活動状況アンケート調査をもとに作成)

ただし年収1,000万円以上の方も3割おり、やり方によっては十分な収入を得られる資格と言えます。

中小企業診断士の報酬の仕組みや、年収を高めるために大切なことは以下の記事でお話しています。こちらもあわせてご覧ください。

中小企業診断士に関するよくある質問

中小企業診断士が廃止になる(なくなる)という噂を聞いたのですが。

中小企業診断士が廃止になるというのは、インターネット上で広がっているデマです。実際にそのような話はありません。むしろ国や政府関係者は中小企業診断士を増やす取り組みをしています。

中小企業診断士の勉強をすると周りに話したら「意味ないからやめとけ」と言われました。

本記事で説明した通り、中小企業診断士の取得には多くのメリットがあります。「意味ない、やめとけ」と言ってくる人は、あなたの成功が妬ましくてジャマをしている可能性が高いです。

中小企業診断士を取れば人生は変わりますか?

独立開業まですれば、収入、働く時間・場所、仕事の相手が変化し「人生が変わった」と感じられます。ただし資格が勝手に人生を変えてくれるのではなく、資格を使って自分で人生を「変える」意識が重要です。

公務員の私も、中小企業診断士を目指すメリットはありますか?

あります。中小企業診断士はもともと「中小企業診断員」という名称で公務員のための資格でした。行政と民間企業のパイプ役も求められており、公務員の経験を活かせる資格です。